この度、『企業内診断士のリアル』と題するビジネス書を刊行した。企業・団体に勤務する中小企業診断士(以下、企業内診断士)の実態や資格の活用方法を紹介している。是非お読みいただきたい。
近年のリスキリング・ブームを受けて、中小企業診断士はますます人気資格になっている。ただ、総数2万7千人の診断士のうち、独立してコンサルタントとして活動しているのは3割で、7割は企業内診断士である。そして、企業内診断士の大半は、資格取得を最後にほぼ何も活動しなくなる。
診断士を持っていても、勤務先で給料が上がるわけではない。転職で有利になるわけでもない。金銭的なメリットがない一方、資格を更新するために診断実務をしなければならないなど、費用と労力がかかる。そのため診断士は、「まったくコスパが悪いクソ資格」「足の裏に付いた米粒(取りたいが取っても食えない)」と言われる。
という企業内診断士の残念な状況が、ここ数年で急速に変わりつつある。2018年に副業が解禁された。コロナ禍で公的支援に従事する診断士が不足するようになった。こうした環境変化を受けて、副業でコンサルティングや公的支援などに取り組む企業内診断士が増えている。
本書では、そうした中でも際立った活躍をしている高田直美さん・土屋俊博さん・青山雄一郎さんをインタビューで紹介している。3人は診断士資格を使ってネットワークを広げ、知識・スキルを磨き、それを駆使して社会の発展に貢献する活動をしている。企業内診断士や副業に興味がある社会人の皆さんには是非、参考にして欲しい。
正直なところ、私は数年前まで副業をしている企業内診断士を「何をやりたいのか中途半端。独立開業に踏み切れない、根性のないヤツ」と馬鹿にしていた。しかし、高田さん・土屋さん・青山さんらの活動を知って、この考えを完全に改めた。
3人は、(我々プロのコンサルタントと違って)経済的・心理的な不自由に悩まされることなく、信頼できる仲間と自由に好きな活動し、しかも社会の発展に貢献している。総合的に見ると、この世の中で最高に自由な、素晴らしい生き方をしていると思う。
その3人が本書のインタビューで共通して言っていたのは、診断士という資格は「人生を変えるパスポートだ」ということだ。資格を取得すると、社外の色々な人と出会うことができる。色々な学習・実務の機会があり、経験とスキルを高めることができる。世界が一気に開けて、見える景色がまったく違ってくる。
もちろん、診断士を取得すれば自動的に最高に自由な生き方を実現できるというわけではない。3人のように、診断士というパスポートを手にネットワークと活動の幅を広げる必要がある。相応の努力は欠かせない。
診断士に挑戦する社会人が増えているのは、良いことだ。ただ多くの人は資格取得が最終ゴールになっていて、その後の活用がない。これは残念なことだ。高田さん・土屋さん・青山さんのように積極的に資格を使って活動し、ビジネスライフを豊かにして欲しいものである。
(2024年12月2日、日沖健)