石破茂氏が27日の自民党総裁選で勝利し、明日、第102代内閣総理大臣に就任する。史上まれに見る激戦となった今回の自民党総裁選を振り返ろう。
岸田首相が8月14日に退陣を表明し、事実上の選挙戦がスタートした。その直後、小泉進次郎氏がまずリードした。これは、岸田首相が不人気で自民党の政党支持率が危機的な水準まで低下していたことから、「選挙の顔」として国民に人気が高い小泉氏を待望する声が強かったためだろう。
ところが、しばらくすると小泉氏は失速した。メディアやネットでは「候補者討論会での発言に中身がなかったから」と指摘されているが、そうだろうか。小泉氏の発言に中身がないのは今に始まったことではないので、失速の原因には当たらない。
それよりも、岸田首相の退陣表明後、自民党の支持率が急速に上向いたことと維新が兵庫県・齋藤知事の問題でズッコケたことから、次期総裁が「選挙の顔」である必要がなくなったことが大きい。選挙の心配がなくなると、ベテラン議員は、43歳の小泉氏が総裁になって一気に世代交代が進むことを警戒するようになった。
小泉氏が失速して代わりに支持が高まったのが、党内右派が熱烈に支持する高市早苗氏と国民に人気が高い石破氏である。こうして小泉・高市・石破が「3強」となった。
3強の争いから抜け出したのが、高市氏である。対中強硬派として知られる高市氏にとって、9月18日に中国・深圳の日本人学校の日本人男子児童が殺害された事件は、強烈な追い風になった(不謹慎なので誰も指摘しないが)。さらに、麻生副総理が高市氏の支持を決めたことで、高市氏が最有力候補になった。
第1回投票では、こうした経緯から高市氏が議員票でも党員票でも1位になった。しかし、国会議員中心の決選投票で、第1回投票で高市氏・石破氏以外に投票した議員たちは、高市氏の下で解散総選挙を戦うことを不安に思った。
高市氏は、統一教会との関係の説明や政治資金パーティー裏金事件の真相解明に後ろ向きで、野党の追及や国民の反発が必至だ。また、高市氏は、「総裁(首相)になった後も靖国神社参拝を続ける」と明言しており、中国・韓国との関係が悪化する。
右派以外の多くの自民党議員は、早ければ10月下旬にも行われる解散総選挙で自分が勝つことを考え、高市氏と運命を共にして火だるまになるよりも、無難な石破氏を消去法的に選んだ。というのが、私が考える石破氏の大逆転勝利の経緯である。
ところで、私は、ある事情で数年前から自民党員である。今回、生まれて初めて選挙で自民党候補者に投票するにあたり、自民党の結党から現在に至る歴史を調べてみた。
調べてみると、ヤクザまがいの激しい抗争を繰り返してきた自民党の歴史の中でも、今回の選挙は屈指の興味深い戦いである。刻々と情勢が変わるのが面白く、9月からはのめり込んで選挙情勢をウォッチした。競馬を予想するのと同じ感覚で、大いに楽しませてもらった(結局、石破氏に投票した)。
やはり選挙は、第三者として傍から見ているだけでは面白くも何ともない。実際に参加し投票すると、自ずと政治家に関心を持ち、政治について真剣に考えるようになる。政治不信が叫ばれて久しいが、国民が選挙に行って投票するのが、最高の解消策であろう。
と言うだけではニワトリと卵の関係で何も変わらないので、投票率を上げるために2つ提案。①投票所に行って投票したらその場で現金1万円を手渡す、②選挙予想のギャンブル(政治ベッティング)を許可する。
これなら投票率が爆上げし、国民が政治に関心を持つようになるのは間違いなし! なのだが、投票率が上がっては困るという政治家も多く…。やはり政治不信の解消は、なかなか難しい課題のようだ。
(2024年9月30日、日沖健)