居酒屋でカスハラ認定される

先日、神戸に出張した際、三ノ宮駅前の居酒屋に入り、一人飲みした。遅い時間の入店で、40分くらい飲んだところで、女性店員から「ラストオーダーです」と言われたので、「追加はありません。お会計お願いします」と言い、代金を支払った。

その後、トイレに行って、少し残ったハイボールを飲み干そうとしていたところ、学生アルバイト風の若い男性店員がやってきて、「そろそろ店を閉めますので、お支払いをお願いします」と言われた。

私が「さきほど女性の店員にお支払いしましたが」と言うと、その男性店員は「もう店を閉めますから」と言う。

私がもう一度「もう払いましたが」と言うと、男性店員は「もう閉店なんですが」と少し強い調子で言う。

さらにもう一度、「もう払いましたが」というと、男性店員はキレ気味に「だから、もう店を閉めますって言ってるじゃないですか!」と言った。

どうやら男性店員は、「お前が金を払ったことは、最初に聞いてわかったよ。こっちが店を閉めると言っているのに、どうしてお前は素直に『はい、店を出ます』と言わないんだ」と腹を立てている様子だった。

私は店員から「もう支払い済みでしたか、失礼しました」という一言を期待していた。支払い済みの客に支払えというのは失礼で、たとえその男性店員のせいではなくても、店として一言詫びるのが常識だと思った。しかし、若い店員に常識を期待した自分が馬鹿だった。

そして、「常識のない不愉快な店員を相手にしたくない。タッチパネル注文・セルフレジにしてくれればいいのに」とつくづく思った。

ところで、飲食店の接客というと、先日、人気グルメ漫画「孤独のグルメ」の作者・久住昌之さんが蕎麦屋を訪れて、タッチパネル注文に変更されていたことや店員の対応が冷淡で居心地が悪かったことをXに投稿した。

すると、その蕎麦屋の店主と思われる人物から「(久住さんは)クソ客の典型」という反論のX投稿があった。ネットで炎上気味に議論になったようだ。

久住さんは「タッチパネルはけしからん」とは言っていないので、店主の反論やネット上の久住さんへの批判はやや過剰反応という印象を持った。が、いずれによせ、タッチパネルや店員の接客は、国民の大きな関心事のようだ。

個人的には、飲食店はタッチパネル注文・セルフレジにして、店員による接客をできるだけなくすべきだと思う。店は、人手不足を解消できるし、カスハラ問題に悩まなくて済む。客は、不愉快な接客に腹を立てることもなくなる。飲食店の人手不足はいよいよ深刻で、国は、飲食店のタッチパネル注文・セルフレジ導入を税制などで支援するべきだと思う。

もちろん、人間による真心を込めた接客を望むという客がいても良い。そういう客は、高級店に行ってはどうか。

神戸の居酒屋に話を戻すと、私がモヤモヤしながら店を出ようとしたところ、近くで私と男性店員のやりとりを聞いていた常連客(中年男性。ずっと店長と親しげにしゃべっていた)から、声を掛けられた。

「おい、ええ歳こいたオッサンが、若い店員をいじめてんじゃねえよ」

なんとなんと、カスハラ認定されてしまった!

さすがにこの常連客の言葉には腹が立ったが、私は反論することもブチ切れることもなく、男性店員も常連客も無視して静かに店を出た。ホテルに戻って、冷静な対応に「ああ、俺も人間として成長したな」とほくそ笑んだ。 

ただ、こうしてブログで愚痴っているようでは、まだまだ人間修行が足りないようだ。

 

(2024年6月24日、日沖健)