派閥解散は是か非か

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、岸田総理大臣は18日夜、自らが会長を務めていた宏池会(岸田派)の解散を表明した。強制捜査を受けた安倍派や二階派も解散は避けられない情勢で、ほかの派閥にも解散の動きが広がるかが焦点になっている。

いま多くの国民が、「派閥は悪」「派閥なんて解散するのが当然」という意見である。派閥の負の側面が噴出しているという認識・批判はまったくその通りだ。しかし、派閥を解散するべきかは実に悩ましい。

まず、派閥解散を実現できるのだろうか。派閥解散は目新しい話ではなく、ロッキード事件(1976年)やリクルート事件(1989年)などの際に議論になった。しかし、なんだかんだで半世紀近く実現していない。

今回、岸田派だけでなく最大派閥の安倍派が解散すれば、他の派閥も「俺たちは続ける」とはしにくくなる(麻生派などは存続の意向らしいが)。念願の派閥解散が実現する可能性がある。

ただ、人間には群れる習性があるので、自民党のように多人数が集まる組織では、自然とグループができる。公式の派閥はなくなっても、非公式のグループまでなくなるとは考えにくい。仮に非公式のグループすらも認めないと、習近平率いる中国共産党や金正恩率いる朝鮮労働党のように、独裁政党になってしまう(日本共産党や公明党もそれに近い)。

とすると、政治活動を進める上で、派閥という公式のグループが良いのか、非公式のグループが良いのか、という選択になる。

非公式のグループには、活動の自由度が高いというメリットがある。半面、組織として統制を維持して継続して活動するのが難しいというのがデメリットだ。企業が自由な発想でイノベーションを創造しようという場合には、非公式の場が有効である。

しかし、政治の場合、パッと思いついて活動し、成果が出たらさっさと関係を解消するというわけにはいかない。ルール・計画に則って組織的に継続して活動する必要があり、非公式のグループは何かと不都合が多い。

自民党の派閥の問題点は、一言でいうと「金とポスト」である。本来、党が主体となって政治資金を管理し、首相が閣僚、自民党総裁が党三役のポストを配分するべきなのに、派閥がその役割を担っている。

もし、現在の政治資金規制法のまま派閥を解散し、非公式のグループが政治資金を管理するようになったらどうか。政治資金の動きはますます捉えにくくなり、返って事態は悪化するのではないだろうか。

個人的には、派閥を解散するよりも、派閥を残し、派閥のあり方を抜本的に改革するのが得策だと思う。派閥から「金とポスト」の権限を奪うとともに、活動や資金の透明性を高めていく。そのためには、ザル法の政治資金規制法を強化することが急務だ。

派閥解消によって政治資金問題が「一件落着」となる。改革の成果を上げた岸田政権は夏(?)の解散総選挙で勝利する。そして来年、派閥が復活し、実質的に政治資金の実態は以前とまったく変わっていない…。これが、国民にとって最悪のシナリオだと思う。

 

(2024年1月22日、日沖健)