酷暑で思う3つのこと

今年の夏は、例年に増して猛烈な暑さである。すでに生命を脅かすレベルであり、国・企業・国民の暑さ対策が急務だ。以下、暑さ対策について3つ問題提起したい。

第1に、オフィスへの通勤である。今年に入ってコロナが下火になったことを受けて、社員に出社を促す会社が増え、従業員が外出する機会が増えている。

出社それ自体は、まんざら悪いことではない。ただ、ここまで暑くなると、テレワークによって外出する機会を減らすことが必要ではないか。環境省と経済産業省が音頭を取って、7月から9月は「原則テレワーク」とすることを提唱したい。

テレワークには、「対応できない業種・職種がある」「経済活動がマヒする」といった懸念がある。ただ、反論する人には、テレワークをコロナ禍ではできたのに酷暑ではできないのか、コロナ禍と比べて酷暑は大したことないのか、という点をよく考えてほしい。とくに健康経営を謳う“先進企業”には、率先してテレワークを導入して欲しいものである。

第2に、マスク。この酷暑でも頑なにマスクを着用している人が多い。

マスクをしている人は、よく「もう習慣になっているから」と言う。しかし、薬物や喫煙が習慣化している人に、国も周りの人も「体に悪い習慣は止めましょう」と強く警告する。国は、屋外でのマスク着用を「原則禁止」とするべきである。

厚生労働省は、昨年6月から「マスク着用は熱中症のリスクを高める」とし、「屋外では、マスク着用は原則不要」としていた。ところが、今年3月から「マスクの着用は個人の主体的な選択を尊重」と変更した。そのため「マスクを外そう」と言えない雰囲気が国民に蔓延している。コロナに目を奪われてマスク着用の危険を放置しているのは国の怠慢であり、早期の方針転換を期待したい。

第3に、屋外のスポーツ、とくに高校野球など部活動である。

国の「屋外のスポーツは控えよう」という呼びかけを無視して、現在、高校野球が行われている。中学・高校の部活動も、暑さのため中止したという話をほとんど耳にしない。高校野球では、選手や審判が足をつったり、応援団が熱中症で倒れたりして、大惨事の一歩手前の状態になっている。

プロスポーツもそうだが、とくに教育の一環である部活動については、ドーム施設を利用する、夜間に実施するといった特別な対策をしない限り、7月から9月、「原則禁止」にするべきだと思う。「高校球児の夢を奪うな」と訴えるファン(高齢者が多い)には、「あなたの夢のために若者の命を奪うな」と言いたい。

と、ここまで書いてきて残念に思うのは、国が動かないと、あるいは実際に大惨事が起こらないと動き出さない、企業や国民の反応の鈍さだ。「変えられない」という日本人の悪い側面が、酷暑の問題では如実に表れていると思う。

酷暑で実際に被害を被るのは、国民自身だ。また、昔と今では、地球環境がまったく異なる。過去とは暑さに対する考え方を抜本的に改めるべきだ。そして、国に頼らず自衛手段を取る、周囲で炎天下のマスク着用やスポーツを見たら注意喚起する、といった行動を取りしたいものである。

(2023年7月31日、日沖健)