強みについて考えたい2つのこと

先週、コンサルタントとして独立開業して22年目を迎えた。支えてくださった方、指導・鞭撻をいただいた方には、この場でお礼を申し上げたい。

この21年間、色々な経験を積み、研鑽してスキルを高めてきたのだが、最も高まったスキルと言えば、何と言っても飲み会のコーディネート力である。

サラリーマン時代は上司から誘われて飲みに行くことが多かったが、独立開業して誘われる機会が激減した。ときには皆とワイワイ飲みたいし、他の幹事役が選んだ変な店に連行されるのも苦痛なので、自分から幹事役を買って出ることが増えた。自然と飲み会の企画・スケジューリング・店選びのスキルが高まった。

たまにライブを聴いた後、ミュージシャンや他の客と連れ立って飲みに行くことがある。入店して、ミュージシャンはもちろん、サラリーマンの客もボーッとしているので、席決め・注文・精算・割り勘など私が率先して行う。こうして、店内での仕切りも上手くなった。

飲み会のコーディネート力は、現在の私が誇れる数少ない強みの1つになっている(強みと言えるのか疑問だが)。サラリーマン時代の自分からはまったく想像もつかなかった変化であり、スキル・強みは経験を積むことによって高まっていくのだと痛感する。

もう1つ、8年くらい前、強みに関して、「そういうことか」という経験をした。

ある会社の研修で、自分で書いたケースを使って演習をした。すると、教育担当者から「日沖さんはケースを書けるですか!」と驚かれた。過去にその会社で研修を担当した講師は、慶応・一橋・ハーバードの所蔵ケースを使って演習をしていたそうだ。

私は、MBA時代にケース作成の技法について学んだが、「自分の研修で使うケースを自分で書くって当たり前でしょ」ということで、強みだとは思っていなかった。教育担当者に言われて、初めて「ケースを書ける」というのが自分の強みだと知った。

このことから、強みは絶対的なものではなく、他人との相対比較であること、そして自分の強みは自分ではなかなか気づかないものだと思った。

企業の経営戦略の基本は、強み(Strength)を生かすか、機会(Opportuniy)を捉えるかである。企業だけではない。個人のキャリアでも、強みを生かして職業選択をする。自社・自分の強みをしっかり把握することが、極めて大切だ。

強みは、経験を積んでどんどん進化していく。将来、自分がどういう経験を積むのかは予測不可能なので、将来の強みを予測することは不可能だ。創業から間もない企業や学生・若手ビジネスパーソンは、強みを固定的に考えないことが大切だ。

自分の強みだと思っていても、ライバルと比較したら大したことない、逆に私のように自分では大したことないと思っても、他人と比較したら相当な強みだった、ということがよくある。他人からフィードバックを受けることが、自分の強みを知る近道だろう。

強みについて思い込みを捨てて、色々と経験の幅を広げるとともに、他人の評価・コメントに耳を傾ける。そうすれば、強みを生かして良い事業をし、良いビジネスキャリアを送ることができるだろう。

 

(2023年7月3日、日沖健)