現在の株価は高過ぎる?

年初から好調だった日経平均が、4月以降、騰勢をさらに強めている。先週まで9週間連続の上昇で、年初からの上昇率は23.6%(69日終値ベース)に達している。

相場格言では「まだはもうなり」とも「もうはまだなり」とも言われる。6月に入って「まだ通過点。来年あたり史上最高値(1989年の38,915円)を更新する」という強気派と「流石に上げ過ぎ。今がピークで、もうそろそろ下げに転じる」という弱気派の見方が交錯している。

短期的な値動きのことはプロでもわからないが(本欄「当たらないアナリスト、当てにならないコンサルタント」参照)、長期的な動向はある程度は見通すことができる。現在の株価は長期的に見て高過ぎるのだろうか。まだまだ上げ余地があるのだろうか。

短期的に株価指数が急落したり、今回のように急騰するのは、需給要因や心理的要因が強く作用するからだ。とくに投資家の心理(強欲と恐怖)を読むのは至難の業で、予測はたいてい当たらない。

それに対し、長期的な株価指数の動きは、経済規模の変化と概ね一致する。日本の代表的な株価指数であるTOPIXと名目GDPの過去70年の相関係数は0.9以上で、実際に極めて相関性が高い。

この考え方を用いたのが、世界一の投資家ウォーレン・バフェットが考案したバフェット指数である。バフェット指数とは「株式市場の時価総額÷名目GDP×100」で、バフェットによると100以上だと割高(買われ過ぎ)だという。

現在の日本のバフェット指数はわからないが、ある投資情報サイトに41日現在「127」という数字があった。4月以降さらに急騰しているので、おそらく現在は140150で、バブル期に近い史上最高水準にある。明らかに高過ぎで、目先はともかく長期的には、水準訂正で下落していく可能性が高い。

ところで、4月以降の急騰は、ウォーレン・バフェットが4月に来日し、「5大商社など日本株を買い増しする」と表明したことがきっかけである。一度買ったら売らないという超長期投資で知られ、割安な時に仕込むためにバフェット指数を考案したバフェット。そのバフェットが割高な日本株を買い増すという投資行動を、どう解釈すれば良いのだろうか。

大きく2つ可能性がある。一つは、バフェットが日本株を割高だと思っていないということだ。「現時点ではたしかに割高だが、日本経済は今後大胆な改革を進めて、GDPが大きく増えていくだろう。とすれば、長期的には決して割高ではない…」

もう一つは、バフェットはもはや長期投資家ではなくなったということだ。「日本経済はお先真っ暗だが、コロナからの経済再開、低金利政策の継続など目先には好材料が多い。このタイミングで俺が『買うぞ』と一声言えば、提灯が付いて、短期的には大相場になるに違いない…」

もちろん、1つ目であって欲しいものだが、個人的には2つ目ではないかと思う(東洋経済オンライン「バフェットの変節に見る投資必勝法の極意」参照)。

長期投資家は、現在の株価を懐疑的に見て、慎重に投資した方が良いだろう。企業経営者と政府は、昨今の株高に気を緩めることなく、改革に取り組むみたいものである。

 

(2023年6月12日、日沖健)