ChatGPTが世界を席巻している。昨年11月30日にサービスを開始してまだ半年足らずだが、利用者はわずか2カ月で1億人を突破し、ChatGPTを使った新ビジネスが続々と生まれている。一方、教育現場での活用などの課題もあり、この革命的な技術とどう向き合っていくべきかが世界中で議論になっている。
ところで、中小企業診断士である私にとっては、ChatGPTが弁護士・税理士・中小企業診断士などいわゆる士業にどういう影響を与えるか、ChatGPTが士業の仕事を奪い、士業が不要になってしまうのか、という点が大いに気になる。
当のChatGPTに「ChatGPTの普及で、将来、弁護士・税理士・中小企業診断士など士業のビジネスは消滅するんですか?」と尋ねてみた。次のような回答だった。少し長いがそのまま転載する。
「ChatGPTやAIの普及は、士業の業界にも変化をもたらす可能性がありますが、それによって完全に消滅するとは言い切れません。士業の分野では、専門的な知識や経験、人間の判断力や倫理観が求められるため、AIだけでは代替しきれない役割が残るでしょう。
AIの進化により、一部の業務は効率化や自動化される可能性があります。例えば、契約書の作成やルーティン業務の処理、税務申告のサポートなどは、AIによって迅速かつ正確に行われることができるかもしれません。しかし、法律や税務の専門的な助言や解釈、クライアントとのコミュニケーション、複雑な案件の戦略立案など、高度な専門知識と人間の洞察力が求められる業務は、AIだけでは充分に対応できないでしょう。
また、士業のビジネスにおいては、クライアントとの信頼関係や個別のニーズに対応する能力が重要です。人間の士業者は、個別の事情や背景を理解し、クライアントに適切なアドバイスやサービスを提供することができます。このような人間性や個別対応の要素は、AIが完全に代替することは難しいと考えられます。
したがって、AIの進化によって士業の業務が変化し、一部が自動化されるかもしれませんが、士業者の存在と役割は依然として重要であり、完全に消滅することは予想されません。むしろ、AI技術を活用しつつ、高度な専門性や人間的な要素を組み合わせることで、より質の高いサービスが提供される可能性があると言えます。」
とChatGPT殿下から士業の明るい未来を聞いてほっと一安心。ただ、次の瞬間、「待てよ」と思った。
ChatGPTは、WEB上にある文章・コメントをオープンAIが集約して回答を作成している(これもChatGPTの解説)。では、誰がWEB上に文章・コメントを上げているかというと、一般の人にとっておよそどうでもいいテーマなので、大半は士業の関係者であろう。もちろん士業の関係者は、「我々の仕事をChatGPTが奪わないでほしい」と願っている。
つまり、この回答は、士業の関係者の「我々の仕事を奪わないでほしい」という願望を集約したに過ぎない。この回答を見て安心するのは、SNSに「私は天才だ」「私は絶世の美女だ」と書き込んで、それを見て喜ぶのと同じだ。
いまAIは日進月歩で進化している。現時点では「高度な専門知識と人間の洞察力が求められる業務は、AIだけでは充分に対応できない」としても、遅かれ早かれ、「充分に対応できる」ようになるのではないか。とすれば、やはり士業の未来は非常に暗いと関係者は覚悟するべきだろう。
さらに、もう一つ考えたこと。実はChatGPTは、すでに我々が想像するよりもはるかに進化している。私のWEB上の文章や著作物から私の経歴・思考回路・性格などを解析し、「本当は士業なんてお先真っ暗なんだけど、(浅はかな)日沖さんを喜ばせるために、『士業は将来も安泰です』とか適当に返事しておくか」と判断した…。
ということは現時点ではなさそうだが、将来的にはそこまで進化しても決しておかしくない。AIがどう進化し、我々の仕事・暮らしをどう変えるのか、注目したい。
(2023年5月8日、日沖健)