今週は、日本の政治について書いてみたい。書くにあたって私の立場を明らかにしておくと、私は数年前から訳あって自民党員である。ただし、これまで自民党に投票したことは1度もない。いわゆる無党派層である。
日本の政治には言いたいことが山ほどあるのだが、1つだけというなら「政権交代が起こらない現状を改革して欲しい」。悪い政策をしたら国民の批判を浴び、政権交代するという緊迫感がないと、政策は進歩せず、国民の生活は良くならないからだ。
たとえば、2013年に始まったアベノミクスで、日銀が空前の金融緩和に踏み切った。それからそろそろ10年になるが、期待した景気浮揚の効果はなく、最近は円安・物価高など弊害が目立つようになっている。
10年もやって効果がない政策は、明らかに失敗だ。このまま続けて良いのか、議論くらいあっても良さそうだ。しかし、岸田首相は「アベノミクスを踏襲する」と一言発しただけで、政策の効果を検証することなく、国民を苦しめる政策をダラダラと続けている。
政権交代するという緊迫感を持つには、米英のような2大政党制になることが望ましい。選挙制度の改革が期待されるところだが、自民党は政権与党に有利な現在の選挙制度を変えたくないので、改革は期待薄だ。
とすれば、野党第一党の立憲民主党が勢力を伸ばすという別のアプローチが考えられる。ところが、現状の立憲民主党は、選挙に負け続け、政権奪取どころか、維新に野党第一党の座を奪われそうな体たらくだ。
かつて前身の民主党が政権奪取した頃、民間人材を公募・登用した。そのため、世襲議員と官僚出身者しかいない自民党と違って、立憲民主党には多彩な人材がいる。この貴重な人材をまったく生かせていない。
おそらく立憲民主党内では、党員の心理的安全性が低く、闊達な議論が行われていないのだろう。心理的安全性とは、自分の評判や地位を損なうリスクなしに自分の考えや感情を共有できているかどうか、という概念である。
たとえば、蓮舫議員が何か発言するたびにバッシングの嵐が吹き荒れている。もはや、蓮舫議員がまともなことを言っても、国民は耳を貸さない状態だ。若手議員などから「蓮舫を要職から外せ」「蓮舫には党の公式の発言をさせるな」という批判の声が上がってしかるべきだが、そういう気配はない。
自民党にも色々と根深い問題があるのだが、最近、岸田首相の政権運営を批判し下剋上をもくろむ動きが出ているように、言いたいことを言える組織の土壌はある。間違った政策に対して内部から批判の声が上がる自民党と上がらない立憲民主党(や維新・共産党)で、どちらが信頼できるか。国民が自民党政権を支持しているのは、賢明な判断だと言える。
ただし、立憲民主党をディスって悦に入っている国民は、現実を直視した方が良い。野党第一党の立憲民主党が弱小なのは、自民党支持者にとっては気分いいかもしれないが、政治の緊迫感が失われ、国民・日本にとって大きな損失になっているのだ。
立憲民主党が内部から変われないなら、日産のゴーン改革のような外部からの荒療治が必要かもしれない。無料で良いから立憲民主党のコンサルティングしてみたいと思う今日この頃である。
(2022年11月21日、日沖健)