業績不振の会社のイケてない社長の口癖を紹介するシリーズの4回目(第1回・第2回・第3回)。今回は、「目標達成」である。
言うまでもないが、企業経営において目標は大切だ。成功哲学の開祖ナポレオン・ヒルは、「目標も計画もなしに成功はありえない」と述べている。ここで、イケてる社長とイケてない社長では、目標に対する姿勢が丸っきり違う。
まず、能力も意欲も低い「まったくイケてない社長」は、目標に無頓着だ。明確な目標を持たず、行き当たりばったりで経営している。あるいは、不適切な目標を掲げ、達成できなくても放置している。これは、海図も羅針盤も持たずに航海に出るようなもので、うまく行くはずがない。
次に、割と良さげなことを言うし、ちゃんと仕事をしている感じなのになかなか業績が上がらない、「なぜだかイケてない社長」は、目標を掲げ、従業員に対し会議や朝礼で「目標達成に向けて頑張ろう!」と発破を掛ける。ところが、目標が適切であっても、達成できず、なかなか業績が上がらない。
一方、業績好調な会社の「イケている社長」は、「目標達成」をさほど強調しない。もちろん、まったく口にしないわけではないが、口癖というほど連呼したりはしない。ところが、ちゃんと目標を達成している。
「目標達成!」と連呼する「なぜだかイケてない社長」よりも、あまり口にしない「イケている社長」の方が目標を達成できるのは、なぜだろうか。
目標を立てるのは社長だが、目標に向けて実際に活動し、成果を実現するのは従業員だ。従業員は、経営者から目標を与えられたとき、目標に心から納得できたら自発的・意欲的に活動する。すると、達成する確率が高まる。
一方、従業員が社長が示す目標に納得できなかったら、さすがに無視することはできないものの、面従腹背でやり過ごす。熱意を持って活動するわけではないので、目標を達成できない。つまり、目標に対する従業員の納得度合いが、達成・未達成の分かれ目になるのだ。
「イケてる社長」は、従業員に「目標達成!」と発破をかけるよりも、目標がどういうロジックで作られているのか、達成したら顧客・社会・自社がどう変るのか、達成に向けてどう行動するべきなのか、といった点を丁寧に説明する。こうした説明によって従業員は目標をしっかり理解し、達成に向けて主体的に取り組む。
「なぜだかイケてない社長」は、従業員に目標を理解させる努力を怠っている。「走りながら考えろ」とかわけのわからないことを言って、従業員を混乱させる。当然、目標を達成できないので、焦って「目標達成!」と連呼する。
つまり、「目標達成!」と連呼する「なぜだかイケてない社長」は、従業員が主体的に活動する状態にできていないことを意味するのだ。
もしも皆さんの会社の社長が「目標達成!」と連呼しているようなら、「目標の背景・詳しい内容・達成方法を説明してください」とお願いすると良いだろう。「あ、伝わってなかったのね」と丁寧に説明してくれるなら、かなり有望だ。
一方、ブチ切れて「それを考えるのが君たちの役割だろ!」とか「うだうだ言わず、頭と体を動かせ!」と言うようなら、処置なしだ。自分の身の振り方を考えた方が良いだろう。
(2022年7月4日、日沖健)