最強の学習法

2002年6月末に会社を辞め、7月にコンサルタントとして開業し、今週で満20年になる。飽きっぽい性格の私が何とかこの商売を続けてこられたのは、クライアント・仲間のコンサルタント・友人、そして家族など、皆さんのご支援のおかげである。この場で御礼を申し上げたい。

私はコンサルタントとして商業的に大成功しているわけでも、顧客や社会に大きな貢献をしているわけでもないのだが、一つだけ自慢できることがある。それは、独立開業した直後にホームページを開設し、今日に至るまで毎週欠かさずこのエッセーを書き続けていることだ。

全国に数多のコンサルタントがいるが、ホームページを開設しているコンサルタントは意外と少ない。ホームページを開設している場合でも、定期的に更新しているケースは少ない。まして20年に渡ってある程度の文字量(1,3001,500字)のエッセーを毎週欠かさず更新しているというのは、コンサルタントでは私だけだと思う。

ほとんどのコンサルタントがやっていないのは、労力と効果がまったく見合っていないからだろう。本エッセーを書くには2~3時間かかるが、ホームページを見た見込み顧客から仕事の引き合いが来るのは、せいぜい年に数件というところだ。こんな面倒なことをしなくても、コネを使って受注すれば生きていくくらいは問題ない。

ただ、私自身は、労力と効果が十分に見合っていると思う。まず直接の効果としては、東洋経済・日経・サンケイ・文春といった大手メディアとの関係ができ、やがて大企業との取引が拡大した。きっかけは、別のメディアの編集者が本エッセーを見て気に入って、私に記事の執筆を依頼してきた。それがきっかけで、大手メディアや大企業との関係が広がった。エッセーを書いたら仕事が広がるとは限らないが、書かないと何も始まらない。

それよりも大きいのは、本エッセーのおかけで継続的に色々と学習するようになったことだ。

私は人の話を聞いたり、ニュースを見たりして気になることがあったら、とりあえずPCのデスクトップにWordのファイルを作っておく。たとえば「ラン活」とか「人的資本経営」といった具合だ。そして、気になったことをネット検索や論文などでボチボチ調べる。調べてある程度考えがまとまったら、エッセーを書いて、ホームページに掲載する。

よく「書くネタがなかなか見つからない」と言う人がいる。そういう人は書きたいことが見つかったら書こうとしていて、いつまで経ってもその時が来ない。ここで「週1度エッセーを書く」と決めておくと、街を歩いていも、居酒屋で呑んでいても、ネタに敏感になり、書きたいことが見つかる。常に書きたいこと=調べることがあり、継続的な学習に繋がっていく。

最近、リスキリング(社会人の学び直し)の一環で、色んな学習法が推奨されている。良い学習法も多いのだが、たいてい学習の効果にばかりに着目し、学習しやすさと続けやすさはあまり考慮されていない。社会人が無理なく継続して学ぶという点で、エッセーを書くというのは最強の学習法ではないかと思う。

私はコンサルタントというやや特殊な商売をしているが、一般のビジネスパーソンにとってもエッセーを書くことは、人生の可能性を広げ、学習・成長する効果が大きい。気軽に挑戦して欲しいものである。

 

(2022年6月27日、日沖健)