私事だが、今年に入って社会主義者かと目を疑う日本のリーダーと狂ったロシアのリーダーのせいで保有株が値下がりし、財産が大幅に減ってしまった。しかし、その間、素晴らしい再会が2つもあって、清々しい気持ちだった。
2月に中小企業診断士(以下、診断士)の理論政策更新研修の講師を担当したら、参加者の中にTさんがいた。Tさんは、私が独立開業した頃にお世話になった方で、今回わざわざ私の研修に参加してくれた。Tさんとは20年ぶりだった。
さらに先週、大学時代のサークルの後輩Yさんと会った。Yさんのことは気になっていたが、かれこれ30年間お会いしていなかった。Yさんは、この2月に診断士試験に合格し、私の存在を知って連絡してきた。
長く生きていると、色々な出会いや再会があるのだが、今回は、いずれも診断士という資格を持っていたからこそ実現した再会である。改めて、「診断士を取って良かった!」と実感した。
私は『中小企業診断士のリアル』など診断士関連の書籍を出版していることから、読者や私の研修・セミナーの受講者などの方から、よく「診断士を取った方が良いですか?」という質問をいただく。
質問に対し、「目的によります。金銭的なメリットを求めるなら、やめた方が良いでしょう。人脈を広げ、人生を豊かにしたいなら、取るのもアリです」と答えている。
弁護士・公認会計士などと違って、診断士には独占業務(資格保有者しか担当できない業務)がないので、資格を取ったからといって仕事・収入が増えるわけではない。就職・転職や社内の昇進で有利になるわけでもない(資格予備校は「有利になる」と宣伝しているが)。資格の維持に費用がかかることから、大半の診断士が収支的にはマイナスだろう。
では、苦労して診断士を取っても意味がないのだろうか。そうは思わない。
資格を持たず会社勤務をしていると、毎日決まったメンバーと決まった仕事をする。異動や担当替えがあり、違ったメンバーと違った仕事をすることがあるが、何年かに1度という頻度だし、同じ会社の中のことなので、まったく知らない人とまったく新しい仕事をするということは、ほぼない。安定しているが、刺激と成長に乏しいビジネスライフだ。
それに対し、診断士になり活動すると、色々な業界で新しい経験をし、新しい知識・情報を得ることができる。その過程で、色々なタイプの新しい人(しかも知能と意欲が高い)と出会い、新しい考え方に触れることができる。変化が多く対応するのはたいへんだが、刺激と成長のあるビジネスライフになる。
人の人生なので、どちらが良いか悪いか、正しいか間違っているか、という問題ではない。ただ、刺激と成長のあるビジネスライフを送りたい、能力を伸ばし、能力をフルに発揮して世の中に貢献したい、と考えている人にとって、診断士は経験・知識・人脈を広げ、ライフステージを変えるパスポートになるのではないだろうか。
いま「経験・知識・人脈」と言ったが、多くの場合、人と一緒に経験し、人から知識を学ぶ。したがって、究極的には、「資格の価値は人との出会い」とまとめることができる。
「パスポート」というのは、資格はあくまできっかけであって、資格を取るだけでなく、何らかの意味のある活動をする必要がある。実際には、資格を取ったきり何も活動せず(拙著の分類では「資格取得が最終ゴール型」)、「頑張って資格を取ったのに何もメリットがない」とブツブツ言っている人が大半である。
という事実を知って、「え、資格ってその程度のメリットしかないの?」と失望するか、「よし、資格を取って色んな人と知り合って人生を変えよう!」と思うか。後者が多いことを祈りたい。
(2022年3月7日、日沖健)