コロナの最大の被害者は未来の子供たち

2020年1月15日に日本国内で初の新型コロナウィルス感染者が報告され、2年が経った。その間、経済・社会、そして国民生活が大きく変わったが、国家を揺るがす重大な変化の割にあまり注目されていないのが、婚姻数の減少、それに伴う少子化の加速である。

いま、日本の婚姻数が激減している。2020年に戦後最少の525,490組を記録したが、2021年も回復せず、史上最少を更新した可能性がある(202118月の速報値は34万1,111組)。

ただ、婚姻数の減少に対する政府や国民の危機感は薄い。2020年に前年の59万組から大きく減った要因について、厚生労働省の担当者は「(前年の)改元に伴う令和婚の反動や、新型コロナウイルス感染拡大の影響でカップルが結婚を先延ばしした可能性が考えられる」と説明している。国民も「コロナが終息すればまた戻るでしょ」という認識だろう。

しかし、この「コロナだから」という認識は、まったく間違っており、非常に危険だ。そもそも、日本の婚姻数は1970年に102万組だったのが半世紀で半減している通り、長期的に減少傾向にある。そして、この傾向をコロナに伴う生活様式の変化などが後押ししている。

結婚するには、まず男女の出会いが必要だが、コロナ対策のイベント中止やテレワークの普及で、出会いの機会が激減している。出会っても、マスクで顔が見えない相手のことを好きになれない。飲食や旅行を制限されてなかなか愛が深まらない。将来の収入を見通せない状況で「結婚しよう!」という気になれない。

コロナ収束後に生活様式や経済状態がどこまで戻るかによるが、企業でテレワークが普及・定着していることや日本経済の衰退で雇用環境が悪化することなどから、婚姻数の回復は鈍いだろう。婚姻数が2019年前の水準に戻ることはなく、2030年までに婚姻数は40万組を下回ると予測する。

日本では、生まれてくる子供に占める非摘出子の割合は2.3%に過ぎず、婚姻数の減少は出生数の減少=少子化に直結する。女性1人が1.3人(合計特殊出生率)の子供を産むとすれば、婚姻数が40万組まで減ったら、出生数は年平均52万人だ。コロナ前の2019年の出生数が21世紀以降で最少の86万人にとどまり「86万ショック」と騒がれたが、これをはるかに下回る超少子化である。

これで話は終わらない。少母化、つまり少子化で子供を産む女性の数が減っていくので、状況はその先も悪化し続ける。最終的に、22世紀に日本という国を維持できなくなる。人口研究では、「人口減少で22世紀に地球上から最初に消滅するのは韓国」というのが定説だが、若い女性が多い北朝鮮を吸収するという“秘密兵器”を持つ韓国よりも、無策な日本の方が先に消滅するのではないだろうか。

コロナ感染による死亡者は、現在まで約18千人である。また、非正規労働者の生活苦や飲食業・旅行業などへの打撃が問題になっている。これらは痛ましいことだが、コロナの最大の被害者は、婚姻数の減少=少子化によって「本来ならこの世に生まれてくるはずだったのに、生まれることができなかった未来の子供たち」ではないだろうか。

政府も国民も、弱毒化し風邪とほとんど変わらないオミクロン株に狂騒する愚を一刻も早く止めて、国家百年の計に立って、婚姻数・出生数の減少を食い止めるために対処する必要がある。

<本コラムの詳しい内容は、近日、東洋経済オンラインに掲載予定>

 

(2022年1月24日、日沖健)