コロナの影響で自粛となった職場の飲み会。ようやくコロナが沈静化したものの、復活の兆しは見えない。
東京商工リサーチの調査によると、今冬の忘年会・新年会について、企業の7割が「緊急事態宣言の発令などに関係なく実施しない」方針だという。また、日本生命保険の調査によると、「飲みニケーション」が「必要」または「どちらかと言えば必要」と答えた人は、全体の38.2%で去年より16.1ポイントも減少した。
ネット掲示板などを覗くと、飲み会がなくなって「寂しい」「残念」という声はほとんどなく、「ああいう場は嫌いなんで超ラッキー」「飲み会が時間の無駄だったと改めて認識した」という声が溢れている。
しかし、本当にこのまま飲み会が絶滅して良いものだろうか。
企業が飲み会を開催する理由はさまざまだが、最大の効果は職場のメンバー同士が深く知り合えることである。
たいていの職場では、メンバーが協力して仕事を進める。メンバーがお互いの考え方や特徴を知っていると円滑に仕事を進めることができる。また近年重要になっているイノベーション(革新)は、「新結合の遂行」がその本質だとされる通り、一人で思いを巡らすよりも、色々なタイプの人がディスカッションすることで生まれやすい。
実際に共同作業をしたり、イノベーションを起こす場がでしっかり交流すれば良いのであって、飲み会は必要ないだろ、という意見がある。そうなれば最も効率的だが、奥ゆかしい日本人はすでに人となりを知った相手でないと、なかなか親密に交流できない。チームビルディングの方法として、飲み会は有効だ。
もちろん、お酒が飲めない人もいるし、終業後も拘束されたくないという人もいるだろうから、飲み会である必要はなく、勤務時間中のランチ会でもオフサイトミーティングでも良い。いずれにせよ、職場のメンバーがお互い深く知り合う仕掛けがあった方が良い。
ということで、そんなに頻繁にやる必要はないものの、歓迎会・送別会・暑気払い・忘年会で年4回くらいは飲み会(やランチ会・オフサイトミーティング)をやっても良いのではないか。
ただし、単純に飲み会を復活させるというのは賛同できない。飲み会の改革が必要だ。日本企業の飲み会というと、仕事の愚痴をこぼし合うならまだ良い方で、上位役職者の独演会だったり、誰が誰と不倫しているといったくだらない話に終始すること多い。こういう飲み会は、やはり時間の無駄だ。
お互いを深く知り合うためには、自分の近況や最近の関心ごとなどを全員から共有すると良いだろう。自営業主の私には職場の飲み会はないが、大学院の元生徒などと懇親会をするとき、近況や最近の関心ごとを全員から1人数分で説明してもらうようにしている(もちろん酔っ払う前に)。
あと、細かいことだが、安い店で不味い酒を飲むと、テンションが下がる。回数を減らす代わりに、参加するのが楽しみになるような少し贅沢な美味しい店を選んではどうだろうか。
会社という組織には、飲み会だけでなく、朝礼・社員旅行・レクリエーション・年始挨拶回りなど無駄なことがたくさんある。コロナを機に無駄なことを無くすのは良いことだが、「無駄だ!」の一言でバッサリ切り捨てるのではなく、無駄の効用にも少しだけ目を向けると良いだろう。
(2021年11月29日、日沖健)