先日この欄でMBAについて書いたところ(5月31日「MBAと中小企業診断士、取るならどっち<下>」)、読者の方から最も反響が大きかったのは、「余談だが」として書いた次の1節だ。
「MBAでは学生同士あるいは師弟間の恋愛・不倫は日常茶飯事で、さらに結婚・離婚に発展することも珍しくない。知的なパートナーを見つけたい人にとって、MBAはお勧めだ」
この文章を読んだ複数の知人・友人から「俄然MBAに興味が沸いてきました!」「生涯の伴侶を探しにMBAに行こうかしら♡」という感想をいただいた。私は男女の機微に詳しいわけではないが、今週はパートナー探しの場としてMBAをお勧めする理由を少し詳しく紹介しよう。
大人の男女の出会いの場というと、かつては勤務先の会社だった。しかし近年、一般職の廃止でパートナー探しを目的に入社する女性社員が減り、社内の人間関係も希薄になり、社内結婚は減少傾向にある。出会いの場としてMBAが会社や出会い系サイトなどよりも優れているのは、以下の4点だ。
第1に、MBAには知的な男女が集まる。まず、人は知的なパートナーを求めるという事実がある。男性の場合、「馬鹿でも何でも、女は可愛ければOK」という人がいるが、アイドルよりも女子アナを好む人が多数いる通り、知的な(雰囲気を持つ)女性に惹かれることが多い。一方、女性の場合、私の知る限り「馬鹿な男はノーサンキュー」という人が大半だ。MBAの学生は世間一般の社会人に比べて知的なので、恋心が芽生えやすい。
第2に、MBAには人生に前向きな人が集まる。人を好きになるというのは、人生をより豊かにしようという前向きな行為だ。気分が落ち込んでいるときよりも、前向きな気持ちのときの方が断然人を好きになりやすい。MBAの学生は、「出世したい」「キャリアアップするぞ」と意欲満々で参加しているので、クラスメイトに好意を持ちやすい。
第3に、MBAでは学生同士の交流機会が多い。授業の討論だけでなく、レポートの作成やプレゼンなど学生が共同作業をして学ぶ。狭い部屋に閉じこもって徹夜で共同作業することもある(私が学んだアメリカのMBAでは図書館・会議室が24時間開いていた)。飲み会などイベントも多い。コミュニケーション量で増えると、自然に人と人の距離が縮まっていく。
第4に、MBAで学生は極度の興奮状態にある。とくに昼間は仕事をしながら学ぶ夜間コースの場合、学生は多忙・睡眠不足で、試験・レポート・昼間の仕事のプレッシャーもあって半ば錯乱状態だ。そのため、普段の冷静な状態なら考えられない相手と恋仲になったり、刹那的な恋愛や不倫に走りやすい。
こうした理由から、世の中のあらゆる組織・集まりの中で、MBAはカップルが誕生する確率が最も高い。しかも、MBAで誕生したカップルは、その後も長く良好な関係を続けている印象だ(不倫カップルは除く)。これは、お互いのことを深く知り合った上で付き合っているからだろう。もちろん、正確な調査・統計はなく、この段落の記述は私の印象にすぎないが。
新型コロナで人との接触機会が減り、昨年の日本の婚姻数は52万件と戦後最少を大幅に更新した。企業でも、従業員に占める未婚者の割合が上昇し、問題になっている。これまで人事部や労働組合がお見合いパーティーの開催やマッチングサイトの開設などあれこれ対策を取ってきたが、ほとんど効果が見られない。
それよりも企業は、有望な独身の従業員を選んでMBAに派遣するべきだ。パートナーが見つかり、経営について学ぶことができ、一石二鳥だと思うのだが、いかがだろうか。
(2021年6月21日、日沖健)