7月以降、新型コロナウィルスの新規感染者数が再び増加し、事態が緊迫化している。各都道府県で3~5月にような飲食店などへの休業要請がまさに始まろうとしているが、本当に正しい対策なのだろうか。
国内で最初の感染者が確認されてから半年以上が経ち、「未知のウイルス」について色々なことがわかってきた。
① 感染力はインフルエンザと比べて弱い。とくにアジア人は、暴露してもほとんどの場合、自然免疫で処理され、感染・発症しない。
② 毒性も弱く、感染してもほとんどは無症状か軽症で回復する。重篤化するのは、高齢者や基礎疾患を持つ人にほぼ限られる(東京都の感染による死者の平均年齢は79.3歳)。
③ 三密など他人との濃厚接触を避ければ、感染を阻止できる。
また、4月7日から始まった緊急事態宣言による対策から、次のことがわかった。
④ 企業の活動・人の行動の制限は、経済や暮らしに壊滅的な打撃を与える。
以上4点から考えて、あるべき対策はどうなるだろう。
現在、進められている対策は、第1波の時と同様、都道府県など“地域別”である。たしかに地域丸ごと企業の活動・人の行動を制限すれば、(③から)コロナを封じ込めることができる。
しかし、(①と②から)99.9%以上の人は重大な感染被害と無関係で、(④から)いたずらに経済や暮らしを破壊されるだけだ。「そんなのできっこない」「勘弁してよ」という反応になり、対策は不徹底なものに終わってしまう。現在の“地域別”の対策では、なかなか感染拡大が終息せず、経済・暮らしも破壊されたまま、という状態が延々と続くことになる。
そこで、まず国は、政策目標を「新規感染者数の減少」から「重篤者・死亡者の減少」へと転換するべきだ。(②から)感染者が増えても重篤者・死亡者さえ増えなければ良いと考えるようにする。
そして国が主導して、対策を“地域別”から“年齢別”へと転換する。次のような対策だ。
「65歳以上は外出を禁止する。家族との同居を含めて65歳未満の人との接触も禁止する。65歳未満は、感染対策に留意しつつ普通に仕事し、生活する」
65歳という年齢は、60歳以上で重篤化する確率が上昇することや企業の定年を考慮して設定した。もちろん、高齢者への買い物など日常生活への支援や子供と別居する場合の家賃の補助などを行う必要がある。
この対策なら、新規感染者数は減らないが、重篤者・死者を確実に減らすことができる。また現役世代が普通に活動するので、経済が正常化する(むしろ、高齢の会社役員や政治家が引退し、経済・政治の改革が進むかもしれない)。高齢者にはたいへん気の毒だが、ワクチンが開発・普及するまで我慢していただこう。
なお、軽症者でも後遺症が残る例が報告されていることを問題視する意見もあるようだが(WHOテドロス事務局長も先週そう警告した)、これは程度の問題、確率の問題だ。常識で考えて、コロナによる後遺症よりも、感染阻止のために経済を停止して自殺・餓死・殺人など経済死を招く方が、はるかに深刻な危機だろう。
この感染者数から死亡者数へ、“地域別”から“年齢別”へ、という転換は、容易なことではない。関係者の多くは、感染者数重視、“地域別”の方が好都合だからだ。
知事は、“地域別”の対応を主導する方が、「何も手を打たないのか!」という住民の批判をかわせるし、「私はコロナと戦う強いリーダーだ」とアピールできる(小池都知事など)。政府は、“年齢別”にして大票田の高齢者を敵に回すより、“地域別”で対策を知事任せにした方が楽だ(菅官房長官など)。マスコミは、なかなか増えない死亡者よりも新規感染者数をセンセーショナルに取り上げる方が、視聴率を稼ぐことができる。
政治家やマスコミには、ロジカルに考え、私利私欲を捨て、感染対策と経済再生に取り組んで欲しいものである。
(2020年8月3日、日沖健)