大塚家具で苦境に立たされている。3年前に“世紀の親子喧嘩”の末に大塚久美子氏が社長が就任したが、販売不振で3年連続の最終赤字に陥っている。資金繰りがひっ迫し、身売り交渉で打開を目指しているが、予断を許さない状況だ。
ところで個人的に「おや?」と思うのは、一部のマスコミやネット掲示板で大塚久美子社長が「やっぱり元コンサルタントは頭でっかちでダメだ」と批判されていることだ。大塚久美子社長は、一橋大学を卒業して富士銀行に入行し、父・勝久前会長が創業した大塚家具に転じた後、いったん会社を離れてコンサルタントをし、3年前に大塚家具に復帰した。コンサルタントをしたのはわずか2年足らずで、元コンサルタントと呼べるものかどうか。
どうやら世の中にはコンサルタントが毛嫌いする人が多いようで、ここぞとばかりに「ほら、やっぱりコンサルタントはダメだろ」と騒ぎ立てている印象だ。
この一件の通り、コンサルタントは人々から嫌われている。経営企画の担当者や番頭さんは、コンサルタントを起用することが自分の無能の証明になるので、一般にコンサルタントを嫌う。これは納得いくが、無関係な一般社員もコンサルタントが嫌いだ。とくにコンサルタントがよく出入りする大企業では、社員がコンサルタントを毛虫のように嫌う。
大企業の社員がコンサルタントが嫌う理由は、はっきりしている。「①俺たちより低学歴なアホのくせに、②ずけずけと会社に入ってきてよく調べもせずに偉そうにアドバイスし、③成果が出なくても高いフィーを巻き上げるのはけしからん」ということだ。
少し補足しよう。まず①について、大企業にはコンサルタントよりも学歴が高い社員が多い。そのため大企業の社員は、コンサルタントのことを「大企業に入れなかったアホ」もしくは「大企業では使い物にならなくてドロップアウトした組織不適合者」と見下している(ちなみに私は後者)。
②については、社外の専門家というコンサルタントの特性上、致し方ないところだろう。③については、一般にコンサルティング報酬は、チャージレート×時間数という準定額方式なので、成果が出なくても高額の報酬になってしまう。
こうした問題に対しコンサルティングファームは、①について、大企業の社員から馬鹿にされないよう、高学歴者を採用することで対応している。東大・京大やアメリカのトップMBAの卒業生なら大企業の社員もうるさいことを言わないだろう、というわけだ。実際に近年、高学歴者がコンサルティングファームに入るようになり、一定の成果が出ている。
また、一部のコンサルティングファームは、②に着目し、クライアントに役員などを派遣し、経営者と二人三脚で経営改革を進めている。いわゆる「ハンズオン」である。また個人事業のコンサルタントは、365日24時間の密着サポートを売り物にすることが多い。
しかし、コンサルタントがいくら高学歴者でも、いくら経営者に寄り添っても、コンサルティングで経営改革の成果を出せないと、「学歴は立派だったし、親身な対応だったけど、結局、何も役に立たなかった」という批判になる。最終的には③、コンサルティングで成果を出せるかどうかが重要だ。逆に、コンサルタントが低学歴でも、冷淡な対応をしても、成果さえ出せれば、「仕事を依頼して良かった!」というクライアントの評価になる。
もちろん、すべてのコンサルタントが成果を出すのは不可能であり、基本的にはコンサルタントはクライアントに嫌われる。コンサルタントは、「悪役レスラー」という自分の立ち位置を直視し、どのような価値をクライアントに提供し、どう納得していただくかを真剣に考える必要がある。
(2018年8月13日、日沖健)