2月9日に開幕する平昌オリンピックで、韓国と北朝鮮が女子アイスホッケーの合同チームを結成することになった。昨年は北朝鮮とアメリカの今にも軍事衝突するかと懸念されたが、今年に入って南北対話が急進展し、雪解けムードが広がっている。
一方、開幕前日の2月8日、朝鮮人民軍の創設記念日に軍事パレードを実施すると予想されている。過去にも、1991年の世界卓球選手権、同年のサッカーの世界ユース選手権、2002年のアジア大会で南北合同チームが結成され、雪解けムードが高まったが、すぐに対立状態に逆戻りしてしまった。今後の北朝鮮情勢はまったく予断を許さない。
テレビでは、「北朝鮮は何を考えているかわからない」という専門家の意見・一般市民の声が報道されている。しかし、北朝鮮の考えは明確そのものだ。①核・ミサイル開発を放棄するつもりは毛頭ない(これは金正恩が明言している)、②ICBMの完成に向けて時間稼ぎをしたい、③日米韓の連携に揺さぶりをかけたい、④経済制裁を緩和して逆に経済支援を引き出したい、という4点である。
日本の考えも明確だ。安倍政権は、①核・ミサイル開発放棄を抜きにした対話はありえない、②北朝鮮の時間稼ぎを許さない、③日米韓の連携に揺るぎはない、④核・ミサイル開発放棄を抜きに経済支援再開はありえない、と表明している。アメリカも日本と同じ考えだが、①④については今後、柔軟な姿勢に転換する可能性がある。
現在、最も「何を考えているのかわからない」のが韓国だ。文在寅大統領は、南北融和路線を掲げて昨年5月の大統領選に勝ち、政権発足後も北朝鮮の核・ミサイル開発に対する米国など国際社会の厳しい対応に微妙に距離を置き、南北対話の機会を探ってきた。今回の対話再開・南北合同チーム実現は、文大統領の一貫した粘り強い取り組みの成果と見ることができる。
しかし、南北対話と言っても「オリンピック成功に向けて協力しよう」というだけの話で、肝心の核・ミサイル開発問題は対話の議題に上がっていない。文大統領が、オリンピックの先に核・ミサイル開発問題まで視野に入れているのか、とりあえず自国開催のオリンピックを成功させたいだけなのか、今後も日米韓で連携して北朝鮮問題に取り組むのか、連携から離脱してでも対話を推し進めるのか、などまったく意図不明だ。
さて、ここからは私の推測。文在寅大統領は、自分の名誉のため、ノーベル平和賞を狙って南北対話を進めているのではないだろうか。
南北統一という朝鮮民族の悲願を掲げる文大統領だが、就任後の半年間で、国際政治の現実をいやというほど思い知らされた。北朝鮮は対話どころか核・ミサイル開発を加速させる、トランプ政権は先制攻撃をちらつかせ経済制裁を強化する、中国が日米韓連携に反発して韓国に実質的な経済制裁を課した・・・。
八方塞がりで、慰安婦問題を蒸し返して国民の支持を繋ぎ止めるしかなかった文大統領。しかし、昨年暮れから経済制裁の効果で追い込まれた北朝鮮が経済支援再開を求めて南北対話を模索し始めた。
よし、オリンピックを理由に対話を再開すれば、国民もアメリカなど国際社会も反対しないだろう。対話してもオリンピック成功以上の実質的な成果は期待できないが、核・ミサイル開発放棄とか面倒くさい条件を付けなければ南北首脳会談くらいは実現できそうだ。先輩の金大中・元大統領が2000年に金正日との南北首脳会談を実現した功績でノーベル平和賞を受賞した。南北首脳会談が実現したら「二匹目のどじょう」で俺もノーベル賞をもらえるのでは・・・。
以上の推測は、文大統領の人間性を疑うたいへん失礼な話だし、真実は本人しかわからない。しかし、こうした推測が成り立ってしまうところに、姿勢が一貫しない韓国政治の問題があると思うのである。
(2018年1月29日)