このたび『すぐやる、すぐできる人の実践PDCA』(ぱる出版)と題する書籍を出版した。ビジネスやプライベートで目標を達成するために重要なのがPDCA、Plan計画・Do実行・Check評価・Act改善の略である。本書は、PDCAを回して目標を達成するためのポイント・技法を、実例を交えてわかりやすく解説している。是非お読みいただきたい。
品質管理の専門家デミング博士が日本にPDCAを紹介したのは、まだ戦後間もない1950年のこと。以来、製造業の品質管理に始まって、あらゆる企業・組織があらゆる業務の管理にPDCAを取り入れている。PCDAは、仕事を進める上での基本中の基本と言って良いだろう。仕事だけでなく、趣味や投資などでも広く活用されるようになっている。
ここで不思議なのは、企業・組織では管理職が「PDCAをしっかり回せ!」と繰り返し檄を飛ばしていることだ。また、書店に行くと、本書だけでなく、PDCAの解説本がたくさん並んでいる。それだけ、PDCAを実践するのが難しいということだろう。
「PDCAなんて簡単」と豪語する専門家・管理職がいる。私の周りでもPDCAを回してビジネス・趣味・投資などで大きな成果を実現している人が、たしかにいる。しかし、全体的には、PDCAで成果を実現している人よりも、挫折してしまう人の方が圧倒的に多い。
なぜ、PDCAで成果を実現できないのか。挫折する原因は人それぞれだが、ポイントになるのが、メソッド(Method、管理方法)である。
PDCAというと、世間一般では、メソッドよりもマインド(Mind、意志・心構え)が強調される。「我慢強さがないのが挫折の原因だ」「飽きっぽい性格で、すぐにモチベーションが下がってしまった」といった敗戦の弁をよく耳にする。
しかし、相当に我慢強い性格の人でも、あえなくPDCAに挫折してしまうことがある。逆に、飽きっぽい性格の人でも、PCDAで大きな成果を実現している場合がある。
分かれ目は、PCDAを管理するメソッドだ。そもそも、何か目標を掲げるとき、最初から意気込みやモチベーションが低いという人はいないだろう。最初の頃の強い意気込みや高いモチベーションが、適切なメソッドがあれば習慣化する。不適切なメソッドなら習慣化しない。習慣化すれば、少々飽きっぽい性格の人でも確実に成果を実現することができるのだ。
では、適切なメソッドとは何だろうか。詳しくは本書をご覧いただきたいのだが、大切なのは、シンプルなメソッド、自分に合った自分なりのメソッドを確立することだ。
ある目標を目指すとき、「よし、やるぞ!」と張り切って、最新鋭の管理ソフトを買い込み、たくさんの管理項目を設定したくなるのが人情だ。しかし、複雑なメソッドだと長続きしない。長続きさせ、習慣化するには、できるだけシンプルなメソッドにするべきだ。
もう一つ大切なのが、自分に合っていることだ。ビジネス書作家や会社の上司は、自分が実践して成功して管理方法を強く勧める。「大学ノートに手書きで記録しよう」「スマホのこのアプリが絶対にお勧め!」。しかし、手書きの習慣がない若者にとって大学ノートは無理があるし、通話・メールくらいしか携帯を使わない私のようなオジサン世代には、スマホは苦痛以外の何物でもない。結局、メソッドは自分なりに考えて確立するしかないのだ。
PDCAは、70年近く言い古された、使い古された技法だが、困難な目標を達成するには必須だ。本書が読者の皆さんがビジネスや趣味・投資などで大きな目標を達成する一助になるなら幸いである。
(日沖健、2017年12月11日)